友だちの赤ちゃんを見せてもらいに家に行くと、これから姉も来るんですって、と友だちが言う。一緒にごはん食べてってよ、うちの姉おもしろいから、ぜったい気に入るよ。 赤ちゃんは抱いたまま立っているとご機嫌で、座るとぐずりはじめる。それで私は気の利かない熊みたいに部屋の中をうろうろしながら、友だちの姉についての話を聞いた。彼女は四十歳近く、夫はたいそう活力にあふれた人物で、小さい会社を経営しているのだという。 噂の姉は子どものあつかいがひどく上手な人で、彼女が抱いるうちは座っていようが立っていようが赤ちゃんは泣かないのだった。私はいささか釈然としない思いで、なにかこつがあるんですかと訊いた。彼女はずいぶんと可笑しそうに、たまたまですよ、とこたえた。 友だちは「私のビール」と言ってペリエを取りだして飲みながら、ねえ最近どうと姉に訊いた。訊かれた姉は自分で持ってきたシャンパン(ちゃんと冷えていた)をす
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