博士(文学・専修大学)学位請求論文。 やおい小説研究にまがりなりにも入りかけた人間として、やおい小説研究はついに博士号が出るまでになったかという感慨をいだかざるをえない。しかも本書は、これまで多々出版されてきた読者と作者をめぐる社会学的分析、クラスタ的分析ではなく、テキスト分析の方法による論文である。これまでの作者・読者をめぐる社会的コンテクストに準じての議論の多くは、本当にやおい小説=テクストを読んだのか?という疑問を抱かせるものであったし、読んでいたとしても安直な思いつきじゃないか?と疑わせるような結論に失望せざるをえなかった。そして文学的な視角からはほとんど無視されてきたのがやおい小説であり、やおい小説をめぐる研究は、社会学の独壇場であったといえよう。本論文は浅薄な社会批評とは一線を画し、方法としてのテクスト批評にかなり自覚的である。当然、やおいマンガとやおい小説の差異についても考慮