猫たちはニートが空を飛ぶのを見た。雲の間を自由自在に飛び回り、腕を振り回せば雷が起こる。猫に人間のことは分からないが、きっとニートは神になったのだと思った。 ニートの家のおばさんは野良猫に餌を与えることで有名だった。そのことで地域住民とだいぶ対立もあったようだが、おばさんは気にしないで野良猫を集めていた。おばさんは「酒鬼薔薇聖斗が来てもうちの猫には指一本触れさせない」という。 おばさんのもとには県議会議員からフリーターまで、いろいろな人間が出入りしていた。なかにはホームレスまでいた。ホームレスは猫の餌だと言って公園で汲んだ水を持ってくる。おばさんは「あら、ありがとう」と言っておにぎりを渡した。ホームレスは猫の頭を撫でて帰っていった。 いろいろなひとたちが出入りしていたが、猫たちはおばさんの息子であるニートの顔を見たことがなかった。いちどだけ家のなかから「うるせえ、ババア」という怒鳴り声が聞