準決勝を前日に控えた静かな月曜日、またしても衝撃的なニュースが日本からもたらされた。中田英寿の現役引退発表である。 その日、私はフランクフルトの拠点をシェアしている同業者3人で、近所のスペイン料理屋にいた。客はわれわれしかおらず、店主が一人で切り盛りしている、まったく商売っ気が感じられない店だ。ふと、同業者の一人が「そういえば」と語り始める。 「何か、向こう(日本時間)の夜9時から、中田英が重大発表するみたいですね」 「ふーん。代表引退なら、大いにあり得る話だよね」 と、私。時計を見ると、午後1時45分。日本との時差は7時間だから、あと15分ほどだ。その後、パエリヤができるのを待ちながら、中田英の進退について、とりとめのない話が続いた。 時計の針が午後2時をすぎたころ、先輩同業者の携帯が鳴る。電話の向こうは、日本の新聞社のようだ。会話のやりとりから、どうやら中田英が代表のみならず、現