戻らない恋人への未練、追慕、罪悪感、自己嫌悪……。「文学性」の議論は別にして、ボブ・ディランの真骨頂は失恋歌だと思う。どうしてもわかり合えない、一つになれない人間同士のもどかしさ。底知れぬ失意の中でも決して消えない恋慕。形を変えながらも彼はそれを繰り返し物語っている。そこに彼の普遍性がある。 ディランのノーベル文学賞報道の中、最初に耳によみがえった曲は、「One of us must know (いずれわかること:筆者訳、以下同じ)」だった。1966年発表の代表的なアルバム「ブロンド・オン・ブロンド」の収録曲だ。 「タン!」というドラムスの音で始まるところやコード進行が有名な「ライク・ア・ローリング・ストーン(転がる石のように)」に似ているが、発声はよりねっとりしていて、声に渋み、重みがある。サビへと演奏が盛り上がる直前、語尾を「うぅ~~、うぅ~」と歌い伸ばす感じなど、「襟裳岬」の森進一の
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