顧客が業務要件を検討する上流工程を,ベンダー企業が支援するケースが増えている。だが,IT知識や技術を振りかざすばかりで,顧客の業務改善に水を差してしまうITエンジニアも少なくない。顧客のビジネス課題を理解できないエンジニアは,いずれ淘汰される。 食品メーカー中堅のD社では,会計システムの老朽化が問題になっていた。10年前に導入した現行のシステムは,度重なる機能追加や修正によりつぎはぎだらけ。保守管理にかかるコストが膨れ上がっていた。さらに,開発当時の担当者が数年前に引退してしまったことが,事態を悪化させた。税制や法律改正へのシステム対応が,後手に回りがちになってしまっていたのだ。複雑なシステム全体を把握している人材がおらず,どのプログラムにどう修正すべきか判断する事前調査に多くの工数を割かねばならないからである。 現状に危機感を抱いたD社は,4月に全社横断的なシステム刷新プロジェクトを立ち