【第1回】暗号黎明期~古代ギリシャ・ローマの暗号~ 「一般大衆の目から隠しもせずに秘密を書く者は、頭がどうかしている」 ~ロジャー・ベーコン『秘密の技法と魔法の無効性についての書簡』~ 暗号に関する西洋の書籍で最も古いとされる中の一節だ。13世紀に書かれたこの言葉、アマゾンで本を選び、iTunesストアで購入した音楽を聴く現代にピタリと当てはまるのではないだろうか。 その昔、暗号の技術を必要としていたのは国家レベルであった。しかし、企業や個人がインターネットを通じた金銭のやり取りを行っている今では、生活レベルまで暗号が浸透している。日常の安全と安心を担っているとはいえ、インターネット上で使用されている暗号技術は専門性が高く、一般的にはほとんど知られていない。 この「暗号と暗号史」では、紀元前から現代まで、文書を秘匿する暗号文がどのような工夫を凝らして作られてきたかを追っていきたい。 暗号と