1――はじめに~60年前の出来事を振り返る~ 2021年がスタートした。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、昨年末には変異したウイルスが発見された上、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」も再び発令され、現時点で今後の推移を見通すのは難しいと言わざるを得ない。 しかし、少なくとも現時点で予見できる範囲では、2月頃に計画されているワクチン接種が一つの焦点になると見られる。具体的には、ワクチン接種の対象者設定や副反応の把握、国民への説明といった課題が想定される。 これらの点について、筆者は感染症や公衆衛生の専門知識を持ち合わせていないため、「どのワクチンが効果的か」「どの程度の副反応が懸念されるのか」といった点を論じることはできない。一方、医療政策の形成過程を研究する身として、「どうやって不確実な意思決定を下すのか」という点に関心を持っており、丁度60年前、ポリオ対
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