2023年はヒップホップ誕生から50周年という記念すべき年だ。その歴史の節目に「日本におけるヒップホップ」に焦点をあてて、その歴史を振り返りたい。 黎明期に日本でどう受容されていたか、日本人の手でどうヒップホップを具体化しようと試みられていたのか。そこで生きたのはどんな人々だったのか。 もちろん一人の視点だけでそれら全てを語ることは難しいだろう。この記事では当時、実際にクラブに出入りし、レコードを聴き、1人の「ヘッズ」だった人物の目を通じた体験を振り返りたい。今回は1980年代からヒップホップを愛聴してきたDJ、ライターの荏開津広さんに話をうかがった。 ー荏開津さんが日本語でのラップを意識されたのはどの時点でしたか? 荏開津:私は映画『ワイルドスタイル』(1983年)に衝撃を受けた世代です。リアルタイム時に映画館で観たわけではなかったですが、それでヒップホップの魅力にのめり込みました。日本