しおりに関するni_lsのブックマーク (3)

  • 【完結済】未来の君に、さよなら - 第38話 満開の桜を咲かせて(中)1

    兆(きざ)しはあった。 それまでは冬眠から目覚めたばかりなのかと疑うほど旺盛だった欲が、二週間ほど前を境にしてぱったり減退したことがひとつ。 そしてもうひとつは、時期を同じくしてあれほど好きだった散歩に行きたがらなくなったことだ。桜色のリードをひとたび手にとれば、そりゃあもう革命でも起きたみたいに大騒ぎして、リードを持つ俺を苦笑いさせるのが夕方の恒例だったのに。 しかし俺ははじめそれらの異変を、死の前ぶれとして捉えることはなかった。 そもそも花見の日から十日以上が経ったその頃というのは、ちょうど一学期中間テストの真っ最中で、俺は意識のほとんどを二年生最初の試験に注がねばならなかったのだ。もちろん居酒屋のアルバイトは休みをもらっていた。そして家では事をなるだけ簡単に済ませ、寝る間も惜しんで机に齧(かじ)り付いていた。 そのような状況下においては、どうしたってモップの優先順位は下げざるを得

    【完結済】未来の君に、さよなら - 第38話 満開の桜を咲かせて(中)1
  • 【完結済】未来の君に、さよなら - 第34話 誰かを愛することができるのだろうか?(後)

    「俺たちが居酒屋を継ぐ?」 柏木は大きくうなずいた。 「優里の『大学進学』や月島の『実家再興』に比べれば、あたしの手にしたい未来ってちょっと漠然としてたでしょ? 『幸せな家庭を築く』なんてさ。もしかすると悠介は『どうしたらいいんだよ』って困ってた部分もあったかもしれない。でも、ようやく具体的な道を悠介に示せるようになったの。これだ! って思ったの。うちで一緒に暮らして、一緒に働こうよ。それがあたしたちの望ましい未来なんだよ」 望ましい未来、と俺は小さく声に出した。 「絶対うまくいく」柏木はすかさずそう続けた。「考えてもみなよ。居酒屋をやっていくのなら、あたしたちみたいな最強コンビはそうはいないよ? 悠介は厨房担当。小さい頃からたくわえてきた料理のノウハウと一年間居酒屋でバイトしてきた経験を活かして、お酒に合うメニューをバンバン開発しちゃいなさい。接客とか配膳とかそういう愛想が必要な仕事はあ

    【完結済】未来の君に、さよなら - 第34話 誰かを愛することができるのだろうか?(後)
  • 【完結済】未来の君に、さよなら - 第26話 それでも愛すべき私の大切な人たち(後)

    高瀬のために時間を使えないもどかしさを決して表に出さぬよう、病室では俺なりに明るく振る舞っているつもりだったけれども、ベッドの上の柏木は明るさの裏にある焦燥感を見抜き、こともあろうに俺を気遣ってきた。 「悠介くん、ワガママ言ってごめんね。優里ちゃんと一緒にいたいよね」と。 それに対し俺は、ぎこちない作り笑いを浮かべるのが精一杯だった。心身共に疲れ切って、「何言ってるんだよ」と取り繕う余裕さえ失っていたのだ。 その結果、強烈な自己嫌悪に陥りながら、俺は家路についている。 9時を過ぎた夜の街には、冬特有の冴え冴えと澄み切った空気が隙間なく敷き詰められていた。 病院を出たあたりから、やけに喉の奥がいがいが(・・・・)して不快だ。どうやら風邪をひいてしまったらしい。 もし熱でも出して倒れたら、「だから言ったじゃない」と高瀬に渋い顔をさせてしまうから、今夜は温かくして早めに眠ってしまおうと決めた。

    【完結済】未来の君に、さよなら - 第26話 それでも愛すべき私の大切な人たち(後)
  • 1