核酸の変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動では,変性剤として尿素やホルムアミドを一般的に用いる.核酸の高次構造にこれらの変性剤はどのように働くのだろうか? 今回はその原理を考察し,二本鎖DNAの構造が尿素やホルムアミドの共存下でどの程度不安定になるかを実際に調べた. 核酸などの生体分子の高次構造を不安定化させる化学物質は,カオトロピック薬剤(chaotropic agent またはchaotrope)とよばれる.カオトロピック薬剤により二本鎖DNAの熱安定性が減少することは,1962年にHamaguchi とGeiduschek により報告された(Hamaguchi, K. & Geiduschek, E. P.: J. Am. Chem.Soc., 84 : 1329, 1962).この論文ではカオトロピック薬剤としてヨウ化物イオンや過塩素酸イオンなどのアニオンが用いられているが,これらの