小貫 風樹 法月綸太郎長編第四作、『頼子のために』。 刊行直後には、この作品こそが法月綸太郎の作風の大転機、とみる論評が相次ぎました。事実、『頼子』以降に出された法月のほとんどの作品には、彼の最大のテーマである名探偵の客観性をめぐる問題が、剥出しといっていいくらい顕著になっています。ですから、『頼子』が転機であったと見るのは、まあ、発表順に即して読むかぎり、最も安全で妥当な意見でしょう。 ところが、『頼子のために』の原型が、デビュー作『密閉教室』執筆以前に書かれていたという事実が明らかとなるや、法月の作風の変質をめぐる意見は百八十度引っ繰り返る。『頼子』以降に顕著となった法月の名探偵をめぐる懊悩は、すでにデビュー当時から法月に内在していたものであるという読みが、ある時機には正当性を与えられてしまいました。振り返ってみれば、デビュー作の内容からも、法月の『頼子』以降の変質を感じさせる文章
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