謎宮会 2000年6月号 :: 小貫風樹 :: 後期クイーン問題の解法、あるいは法月綸太郎の苦悩の無底性について [１]

小貫 風樹 法月綸太郎長編第四作、『頼子のために』。 刊行直後には、この作品こそが法月綸太郎の作風の大転機、とみる論評が相次ぎました。事実、『頼子』以降に出された法月のほとんどの作品には、彼の最大のテーマである名探偵の客観性をめぐる問題が、剥出しといっていいくらい顕著になっています。ですから、『頼子』が転機であったと見るのは、まあ、発表順に即して読むかぎり、最も安全で妥当な意見でしょう。 ところが、『頼子のために』の原型が、デビュー作『密閉教室』執筆以前に書かれていたという事実が明らかとなるや、法月の作風の変質をめぐる意見は百八十度引っ繰り返る。『頼子』以降に顕著となった法月の名探偵をめぐる懊悩は、すでにデビュー当時から法月に内在していたものであるという読みが、ある時機には正当性を与えられてしまいました。振り返ってみれば、デビュー作の内容からも、法月の『頼子』以降の変質を感じさせる文章

[lovelovedog]

「名探偵の客観性をめぐる問題」という話。熟読するとミステリー好きには面白いネタだと思います。

[genesis]

曰く，後期クイーン問題は「クイーンの『無自覚』がもたらした問題ではないでしょうか」，「法月の苦悩の打開の道も、この『無自覚』というキー・ワードの先にこそ存在するのではないでしょうか」