ヨーロッパにおけるマホメットの風刺画が大問題になっているが、「言論の自由」という理念が決して普遍的な価値ではないことをあらためて確認させてくれた。事実、「言論の自由」はかなり特殊な社会的条件の下でのみ可能である。 (1)国民の大多数に新聞に投書できるくらいの識字能力が平等にあること。 (2)ジャーナリズム産業やインターネット産業などの大衆メディアが日常化していること。 (3)根幹となる社会体制が資本主義市場経済であること。 (1)がなければ言論の自由は単なる少数エリートの特権意識の産物でしかないし、(2)がなければそもそも「言論の自由」を誰も行使しようなどという、モチベーションが起こりようがないだろう。そして(3)については、知識人やジャーナリストたちは、なぜか資本主義と言論の自由をあまり結びつけたがらないが、「昨日は正しいと思われていたことが、今日は別の言論によって覆される」という言論の