253 快楽追求の合理化の果てに ―レイヴ/クラブ文化における恍惚への情熱― 渡邊 拓哉 本稿はまず、レイヴ/クラブ文化の特徴の 1 つとして、感覚的な快、つまり 「恍惚」への多大な関心を指摘することから出発し(1 章)、そのような関心が 特定の若者文化に留まらず、ひろく現代文化の 1 つの傾向であることを示唆す る(2 章)。ついで、これに関連する議論としてフランスの思想家 J. ボードリヤ ールの“恍惚論”を取りあげる。彼の議論は、R. カイヨワの「イリンクス」概 念を引き合いにだしながら、現代文化に、恍惚に対する情熱を看て取るととも に、またその恍惚が、現代の快楽の主たる源泉となりつつある状況を描写する ものである(3 章)。これを踏まえ、さらに本稿では、C. キャンベルによる「快 楽主義」の枠組みを参照し、現代文化における快楽追求の在り方を歴史的展開 のなかで捉える(4 章)。こ