認識論的切断とは、もともとバシュラールの科学哲学用語なのだが(バシュラール-アルチュセール-フーコーというフランス科学哲学の系譜がある)、マルクスは青年期とそれ以降では科学への認識方法が根本的に変化したということである。廣松渉風に言えば、疎外論から物象化論へと変化した。実質アルチュセールも同じ事を言っている、ただし科学理論の枠内で*1。 「経済学批判序説」でマルクスが、科学的認識のどんな過程も、ある抽象的なもの、ある一般性からはじまり、現実の具体的なものからはじまるのではない、と言うとき、彼はイデオロギーと思弁的な抽象化のみを告発する態度と、換言すれば、イデオロギーの諸前提とじっさいに縁を切ったことを証言しているのだ。(「唯物弁証法について」p.327-8) ようするに、具体例だけを集めてそこから抽象概念を引き出すことは出来ないということだ。こうしたフォイエルバッハ的な考え方をやめたことが