考える脳・考えない脳 信原幸弘 / 講談社 / 00/10/20 ★★★★ コネクショニズムと計算主義の擦り合わせ 著者の専攻は「心の哲学」だそうだ。本書はコネクショニズムの入門書。「古典的計算主義」とコネクショニズムを紹介し、脳の物理的な仕組みからも、また哲学的な観点からもコネクショニズムの方が有利であることを述べる。しかしその後に、おそらく本書の一番のウリとして、古典的計算主義で想定されるような構文処理は、コネクショニズム的な脳と外部環境の相互作用を通して行われると主張する。このコンテキストでは、知覚のインターフェイスである大脳皮質も、脳にとっての外部環境と見なされる。 これは、ニューラル・コンピュータである脳が、外部環境にノイマン型コンピュータを構築し、入出力を行うというモデルである。著者のコンテキストでは、脳はいわゆる「論理的思考」なるものを、それ自体では一切行わない。「論理的思考