いまわれわれが生活している基盤を作ったものは何だろう? 1960年代に、得意分野を繊維や造船や精密機械からエレクトロニクス分野に大きく移し変えることに成功したことが、最も大きな要素のひとつではないだろうか? いまの日本には、アニメやマンガなどのコンテンツで食べていくべきだという議論もある。しかし、そうしたコンテンツのひとつひとつも1970年代から1990年代まで、基盤となる産業が人々の生活レベルを、一定以上に保っていたから生まれたものなのではないか? 日本の伝統文化も、アニメやマンガも素晴らしいのは確かだが、電子技術がいまの日本の形を作った部分はけして小さくない。 さて、そんな日本のお家芸となったエレクトロニクスに“電子技術”という訳語を与え、1950年代に、トランジスタという未知のデバイスに目を付けて、その応用として世界最初といわれるフルトランジスタ式のコンピュータを作った人物がいた。当