著者はスラッファ研究の対象は理論研究に絞り、シェフォールトにより巧みに整備された結合生産理論に準拠して仕事をしてきた。また同時に、線形生産技術を使用するという広義の意味で「線形生産モデル」に多くの関心を払ってきた。 本書は、第Ⅰ部で、ワルトとレーマクという二大線形生産モデルの比較検討をはじめとして20世紀の主流派理論と代替的理論の比較を行った。また第Ⅱ部において、スラッファ商品生産モデルの理論的諸環境を論じた。そして、第Ⅲ部において内容的にオープンなスラッファ・モデルがどのような環境に適応できるかを展望した。規則性の条件、技術の摂動、工程の截頭などの工夫により、解析可能な範囲を拡大する。 書名の一部である「技術摂動」は、本書第8章の線形摂動を利用した議論から採用した。固定生産技術係数に微小変動を与えるという意味で、技術の摂動により、規則的条件を満たすスラッファ・モデルは構造的に安定である。
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