哲学者ロバート・ノージックが三十代にしてデビュー作『アナーキー・国家・ユートピア』を著し、注目を集めた7年後、政治哲学から一転して哲学本来の課題に取り組んで書き上げたのが本書だ。 ロバート・ノージックは1938年にロシア系ユダヤ人移民の子としてニューヨーク市、ブルックリンに生まれた。そのことが彼の思想形成に相当の影響を及ぼしていることが本書の謝辞において述懐されている。 彼は高校時代に社会党の青年組織に加入するなど、早くから政治・経済に関心を持っていたようだ。プリンストン大学時代では論理実証主義者であるカール・ヘンペルに師事した。 ノージックがデビューする少し前、ちょうどその頃ロールズの『正義論』が出版され、高い評価を得ていた。ノージックはロールズに心酔しつつも対抗意識を燃やし、『アナーキー・国家・ユートピア』を書きあげたようだ。 しかし、やがてノージックは自らの政治哲学の概念の洗い直しの