話せるかと尋ねるメッセージが届く。OKと返信する。通話の着信がある。話を聞く。肯定の語を口にする。話を聞く。気持ちについての語彙をパラフレーズする。話を聞く。心配だよと言う。話を聞く。体感温度と部屋の温度を尋ねる。話を聞く。今日食べたものを尋ねる。話を聞く。 きっちり一時間で彼女は声の色を変える。ほとんど陽気といっていいような、どこか突き抜けた声音で娘の病状を話していた声がすとんと落ち着いて、私が昔から知っている友人の声になる。聞いてくれてありがとう。頼っちゃってごめんね。私はこたえる。なんにもできないけど、聞くだけならいくらでも。それから、いくらでも聞く機会はたぶんない、と思う。彼女はいつも腕時計をつけている。アナログの、大きい文字盤の、学校の壁掛け時計を小さく格好良くしたみたいな時計だ。たぶん今もそれを見ている。この一年、月に一度ばかりの夜の通話がはじまってから、一時間より長く話したこ
「雨にあたると髪の毛が抜ける」という言葉を記憶しているでしょうか。 私が上映会の来場者に尋ねると、中高年はほとんどの方が「覚えている」に手を挙げます。私自身、子どもの頃、親からよく言われたことを覚えています。幼心に「雨に濡れると風邪を引く」と同類のたとえ話だと思っていました。 実は、この言葉、正確にいうと「放射能雨にあたると被ばくし脱毛する」となります。たとえ話にしてはちょっと強烈です。 しかし、事実に基づいた言葉なのです。つまり、かつて日本では放射能雨が降り大騒ぎになったのです。 日本中で放射能雨の騒ぎが始まったのは今から60年前。第五福竜丸というマグロ漁船がアメリカの水爆実験で被ばくした昭和29年(1954年)です。 この年、全国各地で雨から強い放射性物質が見つかりました。京都では1リットルあたり8万6000カウント(現在の飲料水の基準値の1800倍、1万8000ベクレルにあたる)、東
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く