太宰治『人間失格』に、次のようなくだりがある。 自分たちはその時、喜劇名詞、悲劇名詞の当てっこをはじめました。これは、自分の発明した遊戯で、名詞には、すべて男性名詞、女性名詞、中性名詞などの別があるけれども、それと同時に、喜劇名詞、悲劇名詞の区別があって然るべきだ、たとえば、汽船と汽車はいずれも悲劇名詞で、市電とバスは、いずれも喜劇名詞、なぜそうなのか、それのわからぬ者は芸術を談ずるに足らん、喜劇に一個でも悲劇名詞をさしはさんでいる劇作家は、既にそれだけで落第、悲劇の場合もまた然り、といったようなわけなのでした。 太宰治 人間失格 青空文庫 以下、主人公と堀木という登場人物の対話が続く。頭からナンセンスと切り捨ててしまうことも可能だが、彼らの言うことがなんとなく感覚的にわかるような気がするのが不思議でもある。 中間のない厳密な二分は不可能だろうし、また喜劇にしろ悲劇にしろ本当にこのようなポ
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