魚類から始まって、ヒトを経由して、新世界ザルの色覚の世界を旅したあとで、やはり、立ち戻るのはヒトだ。 旧世界の霊長類、とりわけ狭鼻猿類(ヒトや類人猿やニホンザルや多くの種類を含む)のほとんどが、保守的でゆらぎない3色型色覚なのに、ヒトだけがはっきりと色覚多型を維持している意味とはなんだろう。新世界ザルのフィールドに、河村さんが飛び込んだのも、その疑問があったからだ。 「少なくともヒトでは、3色型を維持する選択圧は緩んでいるんでしょう。では、なにが選択圧を緩ませているのかなんですけども、少なくとも産業革命や農耕文明といったことではないんじゃないかというのが、今の考えです。というのは、赤オプシンや緑オプシンの一方がないのも、オプシン遺伝子の前半後半が組み換わったハイブリッド・オプシンも、ほとんど集団によらないんです。ヨーロッパ系であろうと、アフリカ系であろうと、アジア系であろうが。狩猟採集民だ