磯谷の絵柄は、『本屋の森のあかり』のときからすでに、おとぎ話じみていた。とくに、静謐な空間や夜の薄明かりの中で物語が進行しているイメージがある。だから現実の余計な夾雑物を捨象して、設定をピュアに楽しむにはもってこいのものだ。 ずっと後の時代。一人っ子が当たり前の世界となり、兄弟姉妹がいることはもはや遠い昔のおとぎ話でしかなくなった時代の物語である。 そのために、兄弟姉妹の存在は「気持ちの悪いもの」という差別の対象になっている。兄弟姉妹が存在することが知られれば、友だちが誰もいなくなる。 「イジスの話! あの子 弟がいるんだって!!」 「お 弟!? うそ…… 気持ち悪…!!」 いまの感覚でいえば、少し前の頃の「同性愛」を見るような視点だろうか。あるいは「兄弟姉妹で恋愛をしています」と告白するような感覚だろうか。 単行本のカバーには 「いつも気になる。触れてみたい。ずっとずっと一緒にいたい。