「東京に行く途中で一時間ほどそちらに立ち寄るから、神戸を案内してほしい」 つい最近、九州に暮らす身内夫妻からそのような大雑把な頼みごとをされて、若干の面倒くささを感じながらも春先から神戸関係の本ばかり読んでいた私はすぐ、これは陳舜臣『神戸ものがたり』に出てくる「神戸を見たいが一時間しか余裕がないというとき、どこへ行けばよいだろう?」というテーマそのものだと思い、コラム一回ぶんくらいのネタにはなるかなという下心もあって調子よく引き受けた。と言っても一時間で何が出来るわけでもなく、普段よく買い物に行く神戸新鮮市場での食べ歩きを計画しただけだ。 時間に制限さえなければ付け替えられる前の湊川が流れていたハーバーランド近くの川崎重工あたりから出発し、つけ焼き刃の町の歴史解説をしながら新開地を北上するルートをとりたいところだが、なんせ時間がない。その辺は全部端折って、東山商店街すぐ近くの荒田公園パーキ