その日、フランツ少年は朝寝坊して大急ぎで学校へ向かっていた。昨晩は夜更かしをしてしまい、国語の宿題も手つかずのままだ。またあの怖い担任のアメル先生に叱られるのか…と思うと触手もしなだれて元気が出ないまま、港区にある冥王星人学校の門をくぐった。 しかし、教室に入ってみるといつもとは雰囲気が違う。生徒たちは静かで、ふだんのように頭上の求愛器官をカラカラ鳴らしている者など誰もいない。教室のうしろでは、何人もの生徒の親たち、そして冥王星大使までもが悲痛な表情を浮かべながら並んで授業を眺めている。なによりあのアメル先生が遅刻をとがめることもなく、ただ「すわりなさい」と第三触手でフランツの席を指し示すのだった。 少年が席に着くと、先生は悲しげな面持ちで言った。 「皆さん、冥王星語は今日が最後の授業です。国際天文学連合の決定に基づき、来年度以降 “惑星でない冥王星のことばを教えてはいけない” との命令が