『ねことオルガン』(1962、今西祐行、小峰書店)。小峰書店の創作幼年童話シリーズのうちの一冊だが、長らく絶版となっている。 子どもの頃に読んだこの本のことを最近急に思い出し、実家にまだあるか母に聞いてみると、姪(妹の娘)が小さい時にあげたという。今年20歳になる姪はこの本を気に入って、ずっと大切に持っていてくれた。彼女から借りて45年ぶり(!)くらいに再読した。 擬人化された猫同士の会話がとても愉快で、可笑しくてしんみりするお話だったという記憶はあったが、小学低学年の頃は、こんなに深みのある内容だったということまではわからなかった。早い話が、読みながら私は泣いた。別に猫好きだからでは(断じて)ない。そもそもこれは猫を主人公とした多くの子ども向け物語と同様、猫の姿を借りた人間のお話なのだ。*1 なぜ大人が読んでそこまで沁みるのか、以下で少し詳しく物語を紹介しながら書きたいと思うので、どうし