私の父は生まれながらに起業家の気質を持っていたようで、中学校卒業と同時に鶏の飼育を開始した。中学在学中に体を壊し入院し、その時に卵が完璧な栄養食品であるということが分かって、進学もせず、家業の農業もやらずに養鶏を始めたのだ。病院を顧客に高い利益率だったようで、自動車を滅多に見かけない時代に、高校生の友人を尻目に、儲かったお金でバイクを買ったことが自慢だ。その後、アメリカからブロイラー(=肉用若鶏、チキン)が導入されるという時代の流れに乗り順調に事業を拡大し、私が大学を卒業する頃には1000人を超える社員が在籍するようになっていた。 私は子供の頃から漫画家やデザイナー、建築設計士などに憧れがあってそういう世界に進みたいという思いはあったが確固としたものではなかった。父は「後を継ぐか、医者になれ」と言っていたが、医者には関心がなかったため父のあとを継ぐことを決めた。今思うと選択肢がたった2つだ