去年の暮れ、僕は12年住んだ千葉を去り、東京に引っ越した。長く住んだアパートを引き渡すため、ぐちゃぐちゃになった部屋の中を整理していたら、汚いインスタントコーヒーの瓶の底から、小さな南京錠が転がり落ちてきた。 とっくに無くしたものだと思ったのに、なぜここにあるんだろう? 僕の中で10年以上前の夏の朝がブワッと蘇った。 1. それは冷たい夏の日の朝のことだった。僕は変な臭いで目が覚めた。 僕は敷かれた冷たいダンボールの上で、寝袋に包まって寝ていた。一瞬ここがどこだかわからなくなったが、すぐに思い出した。ここは京都、嵐山の近くの公園のあずまや。ヒッチハイク旅行の途中だった。 僕は裕一郎、政司と3人で旅行していた。横浜のランドマークタワーから鹿児島までヒッチハイクで行き、そこから船に乗って沖縄に帰るというのが旅の目的だった。 京都に着いたのは、旅行も中盤にさしかかった頃だった。その日はかなり肌寒