37年生きてきて祖父の葬儀の打ち合わせで葬儀屋の営業マンから初めて聞いたのだが、昨今ではキャバクラのような夜の店でも明朗会計がスタンダードだというのに、お坊さんのお経をあげたりや戒名をつけたりというサービスの料金というのは明確に決まっていないらしい。なんだか価格の高い安いはおいても、厳格に決められているようなものだと思い描いていたから、意外だった。もっとも、意外といっても、僕の日常生活は仕事やゲームやロックや女の子のことばかりで、お経のことなんて一瞬だって考えたこともなかったが。 「なかなかユニークなんですよ」と営業マンは言った。 「ええええ?そうなの?」 僕はそのとき目前に祖父の葬儀を迎えていて一抹の不安を覚えていた。芥川風にいえば、僕の将来に対する唯ぼんやりした不安。具体的にいうと日本国憲法に定められた生存権、健康で文化的な最低限度の生活を営めるのだろうか、という不安、つまりは法外な金