父の定期入れには若かりし日の母の写真が入っている。白いワンピースを身に纏って公園のブランコに乗り、微笑む母の写真だ。その写真がどういう状況で撮影されたのか、私は両親に尋ねたことがある。 「初めてデートした日に撮った。お母さんは、やっぱりお墓は景色と日当たりが良いところがいいわ、って言ってた」 父は語った。初めてのデートで話題がお墓に及ぶというところが何とも我が両親らしい。そう思っていたら、母が言った。 「公園の裏が墓地で、見てたらなんか日当たりの良いお墓はいいなぁと思って」 どうやら「やっぱりお墓は景色と日当たりが良いところがいいわ」という台詞は、両親の初デートにおける母の第一声だったらしい。白いワンピースを着ていながら、汚れを気にせず公園のブランコに乗った理由については「だって乗りたかったんだもの」とのこと。今も昔も変わらず、母は独自路線の人だと思った。 「お母さんは変わった人だと最近気
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