2009年12月10日21:22 カテゴリ本経済 比較歴史制度分析 「今年のベスト経済書」の類のアンケートは終わってしまったが、残念。本書は文句なしに今年のベストワンだ。原著が出たのは2006年だが、今やこの分野の古典といってもよい。訳者の組み合わせを奇妙に感じる人がいるだろうが、中身は経済史をゲーム理論で説明するもの。テーマは中世の地中海貿易というマニアックな話だが、その内容はいま日本の直面している問題を考える上でも示唆に富む。 本書のロジックは、ある意味では単純だ。中世の遠距離貿易で成功したマグレブ商人の評判メカニズムを、フォーク定理で説明する。彼らはユダヤ人で、互いの裏切りに関する情報を濃密に共有し、メンバーの1人を裏切った商人は、地中海の全域から閉め出された。このような「村八分」型のメカニズムは、商圏が地中海に限られているときはうまく機能したが、貿易が欧州の内陸部まで広がると、評判