彼の皿へは多めに注ぐ。ワイスは台に立ち、食事の用意をした。お台所は暖かく、夕食前の焼菓子も良い味だ。ワイスは食卓の向かいから彼を眺める。 顔が上がり、どうかしたのと彼は問う。なんでもないわ。椅子に座ったワイスは微笑む。揃う目線が嬉しかった。空いた彼の皿にはパンを切って足す。 甘い味と良い匂い。彼はよく食べた。バターをすくって塗りつける。淑女らしく控えめに咀嚼した。言葉のない食事風景をワイスはじっと眺めている。 流しの前に一人立つ。同じ生菓子を皿へ乗せ、彼の分は数えて飾る。沢山盛った飾りは崩れた。溢れて余った果物を、ワイスはこっそり口へと隠した。 繰り返しの日々は続く。声もなく寄り添う彼のまなざしを追う。絨毯も脇棚も壁掛けをも越した先。遠くを眺め見るような目は凜々しく甘い色だった。 暖炉の前には幸福がある。もういいかしら、まだかしら。愛しい彼はここにいた。台の上にしゃんと立つ。心は決まって、
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