2020年5月4日、仏作家のミシェル・ウエルベックが、パンデミックがはじまって以来、はじめてコロナ禍についての文章を公表しました。原文は仏ラジオ局「France Inter」に掲載(第三者によって朗読された音声もしばらくは聞けます)。すでにどこかで翻訳されているかもしれませんが、以下、わたしの試訳を掲載します。誤訳等ありましたらご指摘いただけるとうれしいです。 少し悪化した世界に —— 何人かの友人たちへの返信 きちんと認めなければならない。この数週間にわたって交換されたEメールのほとんどは、宛先人が死んでいないか、あるいは死にかけていないかと確認することが第一の目的であったということを。それでも、わたしたちはひとたび確認し終えたら、この状況に対して、なにかおもしろいことを言おうとする。だが、それは簡単なことではない——この感染症は、不安を掻き立てると同時に退屈なものであるという離れわざを