ハインリヒ・ヒューガー『プロメテウスと火』 失われた台本 ベートーヴェン唯一のバレエ音楽、『プロメテウスの創造物』の続きです。 前回は、序曲と、神の怒りを表す導入の「嵐」を聴きましたので、いよいよ本編に入っていきます。 前述しましたように、バレエの台本は惜しいことに失われてしまっていて、詳しい内容は分かりません。 よって、当時のままのバレエ上演は不可能です。 ただ、脚本を書いたヴィガーノが1821年に亡くなった直後に出版された、『振付師・演出家サルヴァトーレ・ヴィガーノの生涯と作品の記録』という彼の伝記の中に、ストーリーの概要が記されています。 それが、あらすじや、音楽のつけられた場面を知る唯一の手掛かり、ということになります。 それによると、前回取り上げたギリシャ神話のプロメテウス物語とはかなり違っていて、ヴィガーノのアレンジだったことが分かります。 舞台は全2幕で構成されています。 第