周囲に音を出すようなものが無いのに、「キーン」とか「ザー」などといった音が聞こえる──。そういう耳鳴りの症状を持つ人は、意外と多いようだ。時々、もしくは常に耳鳴りがするという人は、人口の18%程度いると見られている。 もっとも健康な人でも、静まりかえった場所にいると、たまに耳鳴りを経験することはある。実際、全く音のしない「無響室」と呼ばれる部屋に健康な人を入れ、擬似的に難聴と同じ状態にすると、耳鳴りがするという。これは、無音のために起こる耳鳴りなので、病的なものではない。 一方、体の異常による耳鳴りには、心臓の拍動音や呼吸音など自分の体内の音が音源となる「他覚的耳鳴り」と、音源のない「自覚的耳鳴り」の2種類がある。このうち、ほとんどは自覚的耳鳴りだ。「実は自覚的耳鳴りは難聴の症状の1つだ」と話すのは、日本赤十字社医療センター耳鼻科部長の矢野純氏。 矢野氏によると、「音が聞こえる」まで