法令を改正したり廃止したりする場合、既存の法律関係を考慮することなくいきなり新しい法律関係を適用すると、それまでの法律関係に基づいて営まれてきた社会生活の安定性は大きく損なわれることになります。そのため、新しい法律関係に円滑に移行できるように既存の法律関係をある程度認める等の規定を置くことが望まれます。このような規定を経過規定といい、通常、附則に置かれます。 そのような経過規定の中に、よく似た二つの規定があります。ひとつは「なお従前の例による」というもので、もうひとつは「なおその効力を有する」というものです。 両者は、既存の法律関係の存置という点については、ほぼ同じ効果を有するといえます。特に、罰則の経過措置として規定される場合には、両者の間に効果の差はほとんどありません。実際に、罰則の経過規定にはどちらも用いられています。 しかし、両者には異なる点もあり、ときにはそれが大きな意味を持つこ