最近「熱輻射実験と量子概念の誕生」という本を出した小長谷大介さんの同じ題目の講演を聞いた。日本科学史学会http://historyofscience.jp/ の「科学史学校」という、科学史に関心のある一般の人向けの企画だそうだ。わたしは科学史家の著書の訳者ではあるが科学史家ではないので期待された聴衆には合っているのだと思うが、ほかの聴衆の多くは科学史学会関係者だろうと思われた。 現代の物理学の「量子」概念の始まりが、Planckの「熱輻射」に関する理論(とくに1900年10月の論文...こういう細かい情報は小長谷さんの講演による)にあることはよく知られている。それは、実験結果を、従来の古典物理をもとにしたRayleighの理論(たとえば1900年6月の論文)では波長の長い側、半経験的なWienの理論(1896年の論文)では波長の短い側しか説明できないという状況のもとで、普遍的な理論を求め