いま授業でヤーコプ・フォン・ユクスキュル(Jakob von Uexküll)を読んでいる。テキストとして遣っているのは、『生物から見た世界』(日高敏隆・羽田節子訳、岩波文、2005)。これは、かつて思索社から刊行された『生物から見た世界』(日高敏隆・野田保之訳、思索社、1973)の前半部を改訳したものである。事実、新しい訳のほうが数段読みやすいし正確な訳となっている。 ただ残念なのは、一つに、旧版の後半部をなす「意味の理論」が収載されていないこと、二つに、古いテキストでカラーの挿絵だったものがモノクロになったこと、三つには、古い版ではポルトマン(Portman)とトゥーレン・フォン・ユクスキュル(Thure von Uexküll )の解説が併載されていたのだが、今回の文庫版ではこれらが割愛されたことである。 『意味の理論』(Bedeutungslehre)はぜひとも新たに訳出して欲しか