『トロピカル・マラディ』(04)、『世紀の光』(06)と、タイから世界へ向けて作品を送り出すごとに見る者たちを驚嘆させてきた映画監督アピチャッポン・ウィーラセタクン。2010年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを見事に受賞した彼の監督最新作『ブンミおじさんの森』が渋谷シネマライズで公開されている。 今作を見て私たちが何よりも魅せられたのは、アピチャッポン・ウィーラセタクンがタイの農園地帯で暮らすブンミおじさんたちの姿を通しながら見つめていく、そこに生きる人々の<生>の輝きそのものだ。ときにどこまでも透明であり、ときにどこまでも艶めかしくもある夢幻的な<生>のたしかな存在感が、この映画には確実に根付いている。常連の俳優や撮影クルーたちと共に、アピチャッポン監督は、そんな自身の映画をどのようにして生み出しているのだろうか?あるいは、アピチャッポン監督にとっての「映画」とは? ――こうした私たち