「おはよう、千早」 「おはようございます」 「改めて、誕生日、おめでとう。」 「…ありがとう、ございます。」 今日は千早の誕生日。小鳥さんの計らいもあって、仕事はオフをもらっている。 もちろん千早にもそのことは伝えてある。 それに。 「千早、どこに行きたいか、決まったか?」 どこでも、千早の行きたいところに連れて行ってやる。そう、約束していた。 一時期の異常なまでのストイックさは影を潜め、 最近は、時折女の子らしい甘えを見せるようになっていた千早。 そんな彼女への、ささやかなプレゼント。 「誕生日、どこか千早の行きたいところへ行こう。どこがいい?」 1週間前にそう尋ねたとき、千早は真剣に考え込んでいた。 以前の彼女なら「レッスン」と即答していたところだ。 この変化は成長と読んでいい、と思う。 そしてそのまま答えを保留されて迎えた、今日。千早の、誕生日。 「…どこにも、行きたくありません」