作家・くどうれいんさんが大切にしている、料理の本。『ノルウェイの森 (下) 』August 17, 2023 主人公のワタナベが恋人の父の病室を訪ねる場面。持参したキュウリに海苔を巻き、醤油をつけてポリポリと食べるワタナベを見て、それまで食欲のまったくなかった父は「キウリが食べたい」と言う。そしてこの会話が繰り広げられます。死と隣り合わせにいる人間の食欲を掻き立てたものは愛情のこもった料理でも消化に良さそうな食事でもなく、この武骨なキウリだったことに感動しました。これを初めて読んだ高校生の私は、フラペチーノや海鮮丼などカロリーの高い食べ物を魅力的に書くことで読者の食欲を掻き立てたいと思っていましたが、シンプルな野菜の描写だけでそれができることに衝撃を受けたんです。この小説に出合ってから食べ物への眼差しや、書くときの姿勢が変わった気がします。
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