「芦部信喜(あしべ・のぶよし)さんという憲法学者、ご存じですか」 平成25年3月の参院予算委員会。民主党(当時)の小西洋之(45)は首相の安倍晋三(63)にこう尋ね、「知らない」という言質を取ると「憲法学を勉強もされない方が憲法改正を唱えるというのは私には信じられない」とあきれてみせた。 一国の首相が特定の学者を知らないことでこき下ろされる。「こんな事態は前代未聞だ」と著書で嘆いたのが、東京外国語大教授で国際政治学者の篠田英朗(ひであき)(49)だった。そしてこんな問題提起をしている。 「このような事態が東大法学部憲法学者の名前をめぐる場合以外に起こりうるだろうか」(ちくま新書「ほんとうの憲法-戦後日本憲法学批判」) 戦後の憲法学は、東大法学部系の学者に牽引(けんいん)されてきた。その学説によって絶大な影響力を持ったのが芦部だった。 司法試験受験生のバイブル かつて東大法学部で憲法学の講座