第1回 無知と薀蓄とニューヨーク 2017.03.30 更新 美味しいごはんを食べながら、隣席の会話を盗み聞きする。そんなコンセプトで続けていた雑誌連載「天国飯と地獄耳」が、このたびウェブマガジン「キノノキ」に場所を移して再開することになった。 過去に登場したのは「鮨屋で馬肉の話をする女」「街コンの感想戦をする婚活女子会」「深夜の立ち食い蕎麦屋にたむろするタクシー運転手」「人身事故の目撃談で盛り上がる専業主婦」「とんかつ屋の不機嫌なフランス人」「相撲の桝席」「機内でCAにえこひいきされる貴公子」「スイーツをつつく芸能事務所のマネージャーたち」などなど。食い意地とノゾキ趣味を両立させては「取材」と称し、会話の断片からあることないこと組み立てて、胃袋を妄想でいっぱいに満たす。我ながら、なんともゲスい連載だ。 連載を中断していたのにはいろいろと理由があって、一つには、私自身がニューヨークへ引っ越