大人のためのブラックボックス読解講座――クロージャとオブジェクトの微妙な関係(その2):プログラミング言語の進化を追え(1/3 ページ) 前回に引き続き、Scheme言語の処理系、Gaucheを開発している川合史朗氏が、クロージャの機能を検証し、関数型言語とオブジェクト指向言語の関係について解説していきます。今回は、クロージャとオブジェクトのより深淵を探求します。 抽象化ツールとしてのクロージャ C++的なオブジェクトの世界では、オブジェクトの実体とは「ひとかたまりの構造体としてメモリ上に置かれたインスタンス変数の値」にすぎません。オブジェクトのポインタを取れば、それは事実上、その構造体へのポインタを持っていることになります。クロージャを「関数」中心で見ていると、その実体は「オブジェクト」の実体とは異質なもののように思えるでしょう。 確かにクロージャのナイーブな「実装」は、関数ポインタと環