1 問題の所在 近年「ひきこもり」に関わる人々の間では、当事者の高年齢化(伊藤ほか 2003)(斎藤監修 2004)や対人関係獲得後の閉塞状況(石川 2003b)を背景に、就労に対する関心が高まっている。2000年以降、「ひきこもり」論における重点はコミュニケーションの問題から就労の問題へと移行したことが指摘されているが(塩倉 2002)(*1) 、こうした中で「ニート」は「ひきこもり」を回収する形で登場してきたような印象を受ける(*2) 。 「ニート」は「学校に行かず、職業訓練も受けず、就職活動もしない状態」なので、「ひきこもり」も当然そこに含まれることになる(*3) 。また、「ニート」に関する諸議論でも「ひきこもり」はその一部として位置づけられている(*4) 。しかし、果たして「ひきこもり」を「ニート」に回収することは可能なのだろうか。 ここで着目したいのは、両者に関する議論の中