江戸時代の浮世絵師は、版元に絵の仕事を依頼され、依頼主の要望に沿った絵を描きあげるのが基本的な仕事の流れでした。依頼される仕事には書物の中に描く挿絵もあれば、お寺に依頼されて天井画や壁画を描く大きな仕事もありました。 この仕事の流れは江戸時代を代表する浮世絵師・葛飾北斎(かつしかほくさい)も同じ。細々した仕事も弟子を使いながらこなしていたのでしょう。 そんな北斎のデザイナーとしての仕事が垣間見れる書物が、今回紹介する図案集「今様櫛きん雛形」です。 「今様櫛きん雛形」は文政6年(1823年)に刊行された書物で、葛飾北斎がデザインした櫛(くし)や煙管(きせる)の図案が掲載されています。3冊からなる図案集で、櫛と煙管の様々なデザインが実物大サイズで紹介されているんです。 「今様櫛きん雛形」は職人さんに向けて刊行された書物で、当時は職人さんが図案を切り取って、櫛や煙管を作るときの部材に貼り付けて彫