著者: べっくや ちひろ 「ママになれ」なんて、誰も言ってないのに 「そろそろ家を買おうか」と言い出したのは夫で、「それなら蔵前がいい」と言ったのは私だった。 ユニークなカフェや雑貨店が続々とオープンしているおもしろそうな街だと、雑誌で見て知っていた。本屋好きとしては、独立系書店が点在するのも魅力的に映った。 夫が挙げた条件である「東京駅へのアクセスがいい」「下町感がある」「頑張れば手が届く価格帯(重要)」にも当てはまる。 何より、街の東を隅田川が流れているのがいいと思った。川のある街に惹かれる性なのだ。 2018年の春。4月にしては蒸し暑いよく晴れた日に、私たちは蔵前に越してきた。 結婚して丸2年。息子は8カ月になったばかり。 子連れでの引越しなのに、「公園が多い」とか「子ども用品店が近い」といった条件をまったく考えずに、ただ自分が気に入りそうな街を選んだのが、今振り返るとなんとも好き勝
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