宮内悠介の短篇集。純文学作品ではすでに『カブールの園』『ディレイ・エフェクト』という二冊の短篇集があるが、SFもしくはミステリの短篇集としてはこれが最初の一冊となる。厳密に言うと、『盤上の夜』『ヨハネスブルグの天使たち』『彼女がエスパーだったころ』『スペース金融道』『月と太陽の盤』は短篇連作を一冊にまとめているので、書誌的には短篇集なのだけど、現在の出版慣習では長篇とほぼ同等の扱いだし、読者もそのように受容している。 独立して書かれた短篇は、限られた枚数で設定やキャラクターを読者に伝え、物語を完結させなければならない。長篇や連作とはまた違った技量が要求される。しかも、『超動く家にて』は、宮内さん本人があとがきで「ネタに偏った作を集めたもの」と明言し、解説で酉島伝法が「盆暗純度の高い」と賞賛(!)しているのだ(そう、なんと酉島さんが解説担当。大ボーナスである)。読者としてはいやおうなく期待が