校閲作業で注意すべきポイントの一つに「突然の改名」というのがある。つまり、渡辺さんが渡部さんになったり、○○市長が○○社長になったり、記事に出てくる固有名詞などが、途中で誤ったものに変わってしまうことを指す。ある大先輩によれば、このミスを防ぐためには「記事を読み終えた後で、もう一度頭から固有名詞だけをまとめてチェックしていくこと」が有効だそうだ。その大先輩いわく「これぞ校閲の秘伝!」。 早速普段の読書でもこの秘伝を実践してみよう、というわけではないが、職業病か、いくつか見つかった。まずはギュンター・グラスの「犬の年」。邦訳で2段組みの上下巻、計約700ページの長編小説だが、物語のカギを握る犬の名前「ハラス」が1カ所だけ「ハスラ」になっていた。翻訳者は愛犬家で、ここから取って自分の犬にも同じ名前を付けたという。まさか間違えてないだろうね、といえば意地が悪すぎる。 次はちょっと違うケース。中野